西尾勝彦(にしおかつひこ)は関西で展示形式の詩の発表や朗読、私家版の詩集制作などの活動を行っている詩人です。本書は2010年「朝のはじまり」、2012年「言の森」に続き、BOOKLORE刊行第三弾となる詩集です。また、一年に一度発行を予定している旅人と詩人の雑誌「八月の水」の編集人でもあります。
「耳の人」は詩集ですが、これまでとは違い一冊を通してひとつの物語になっています。読み進めるほどに、耳の人という人物との不思議な関わりを思い、自然と書き手の眼差しに重なります。音、光、たたずまい、表情、あたかも一緒にその景色を見ているような気持ちにさせるのは、ひとつひとつ丁寧に言葉で情景を描いているから。それは、おしつけるようなものではなく、ほどよい関係をたもちつつ想像をすることができます。彼の綴る言葉の中をしばらく、ぶらぶらと歩いていたいという気持ちにもなります。
表紙の題字は活版で記しています。詩と同様、強い印象は感じられなくても、どこか余韻の残る本として仕上がりました。
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